「医療関連性」が無く、「医行為」に該当しないとしています

 

1.タトゥーは医療ではない

大阪高裁の西田真基裁判長は、有罪判決を下した大阪地裁の判断について「医師法の解釈適用を誤ったもの」として破棄した。

一審判決は医行為を「医師でなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」と定義し、感染症や皮膚障害、アレルギーを引き起こすおそれのあるタトゥー施術は医行為に当たると結論づけた。

これに対し、弁護側は医師法制定当時の国会答弁や学説を根拠に、医行為は「疾病の診断・治療・投薬」など医療に関連するものであると主張。上記の定義の前提として「医療関連性」が必要だと訴えた。

高裁判決はこうした弁護側の主張を認め、「医療関連性も必要であるとする解釈の方が、処罰範囲の明確性に資する」と判断。

タトゥー施術によって「保健衛生上の危害が生じるおそれ」があることを「否定できない」としつつ、「本件行為は、そもそも医行為における医療関連性の要件を欠いている」と指摘した。

整理すると、医行為というためには

①医療関連性がある

②医師でなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為

の2つの要件を満たす必要があるが、タトゥー施術は①を満たしていないので、医行為には該当しないことになる。

 

2.彫り師と医師は別の仕事

「入れ墨(タトゥー)は、地域の風習や歴史的ないし風俗的な土壌の下で、古来行われてきており、我が国においても、それなりに歴史的な背景を有するものであり、1840年ごろには彫り師という職業が社会的に確立したと言われている」

高裁判決はタトゥーの歴史や文化に対して、一定の評価を与えた。

ある時期以降、反社会的勢力の構成員が入れ墨を入れるというイメージが社会に定着し、世間一般に否定的な見方が広がったとする一方、近年では外国での流行の影響もあって、ファッション感覚や個々の心情の象徴としてタトゥーを入れる人が増えていると考察。

「タトゥーの歴史や現代社会における位置づけに照らすと、装飾的ないし象徴的な要素や美術的な意義があり、また社会的な風俗という実態がある」と指摘した。

彫り師と医師という職業の違いについては、以下のように言及している。

「彫り師やタトゥー施術業は、医師とはまったく独立して存在してきたし、現在においても存在しており、社会通念に照らし、タトゥーの施術が医師によって行われるものというのは、常識的にも考え難い」

「タトゥーの施術において求められる本質的な内容は、その施術の技術や、美的センス、デザイン素養などの習得であり、医学的知識及び技能を基本とする医療従事者の担う業務とは根本的に異なっている」

「医師免許を取得した者が、タトゥーの施術に内在する美的要素をも習得し、タトゥーの施術を業として行うという事態は現実的に想定し難いし、医師をしてこのような行為を独占的に行わせることが相当とも考えられない」

タトゥーについては、その歴史や社会的位置付けに照らし、象徴的要素や社会的な風俗という実態があって、社会通念や常識からは医師が行うことが考え難いこと、また、タトゥー施術に求められる技術やデザイン素養といった本質的な内容が、医療従事者の担う業務とは根本的に異なっていることなどから、「医療関連性」が無く、「医行為」に該当しないとしています。

彫り師と医師は別の職業。当たり前といえば当たり前なのだが、一審判決ではこの点が一緒くたにされていた。高裁判決はこの「当たり前」を丁寧に解きほぐした、常識的な内容と言える。